2015年12月13日日曜日

2015年はこんな曲を聴いていたよ

昨年末はやらなかったんですね。これ。

単純にこの一年を振り返るのは面白いし、マイルストーン的な意味で老後の楽しみになる。あと半月ほど2015年は残っていますが、まあいい。




さて。

今年はS.Carey の"Supermoon"EPから。2014年の傑作"Range of light"に続く流れ。

 

美しい。釣りでも始めようかしら。
彼はBon Iverのパーカッショニスト。新曲の"Supermoon"、そして"Range of Light"のオルタネイト・バージョンが収められている本作は、よりピアノ主体の仕上がり。繊細で、より静謐感があり、楽曲の持つ本来の叙情性が強調されている。

余韻というのか、音のない場所にも耳をすませる。そんな感じ。Radioheadのカバーも。



ロックンロールもずいぶん聴きました。主食ですから。
最近紹介したChris CornellやThe Winery Dogsは、いずれも良い作品で、よく聴きました。
Chris Cornellさんの老い支度
The Winery Dogsさんたちの新譜がかっこいいよ

その他、Thin Lizzyの後継のBlack Star RidersやPuciferの"Money Shot"など。またレビューしたい。聞き込みが不足している。
期待していたMutemathは残念な出来。かな。えーって思った。キャッチーだし、これは売れるだろう。でもなんだか最近のThe Mars Voltaのようながっかり感。こちらももう少し聴きこんでみるけどさ。


あれこれ考え、紹介するのはRichie Kotzenの"Cannibals"。
 

おしゃれだぜ。

この人、The Winey Dogsとソロの2枚を一年で出していた。まったくワーカホリックですね。
テンションからいってもグルーヴからいっても、The Winery Dogsの方をオススメする。しかし、この人の薄味加減が、なんだかんだいっても好きなんでしょうね。やっぱり聴いてしまう。

Cannibals
Cannibals
posted with amazlet at 15.12.12
Richie Kotzen
CD Baby (2015-01-08)
売り上げランキング: 133,676

リッチーさんならファンクやソウルに耽溺することもできるし、ギター・オリエンテッドなレコードだって作れる。しかしこの人はいつも、薄味でおしゃれなレコードを作ってしまう。煮え切らない。もったいない。しかしまた聴いてしまう。

中庸を愛する才人のレコードに、耳を傾ける機会が多かった一年でした。



ポップスは、というと。

 

昨年の作品なのだけれど、ショートフィルムとして非常に秀逸だったので。
シャネルとのコラボ。タバコをくゆらせるご婦人は、チャップリンの娘さんなのだそう。気品あるPVの仕上がりが、ファレル独特の気持ち悪くも美しい世界観を際立たせています。癖になる陶酔感がある。

昨年の"Happy"で日本でも認知度を高めましたが、はやくN.E.R.Dでレコード出せよ。



実際のところ、今年最も聴いたのはAqualungです。フジでライブも見れたし、サイン会でMatt Halesさんと握手しちゃったし。
フジカエリ'15
そんなマットさんの秘蔵っ子、Lianne La Havas はセカンドをリリース。決して悪くはなかったけれど、もっと心が浮かぶような素敵なメロディが入っていると印象がよくなったかな。どうも地味な印象でした。が、グラミー賞にノミネートはされているそう。
ようやくAqualungさんの新譜がでたところで、やっぱLianne La Havasちゃんがすごい件

Adeleとかももちろんさすがの出来でした。ただ、ガールズポップというところでいえば、Tori kellyだろうか。

 

ずいぶん前からやっているような気がするけれど、初のフルレングス・レコード。
僕が初めて聴いたのは2012年。マイケル・ジャクソン"PYT"ののカバー。
2012年はこんなのを聴いてたよ。
"アメリカン・アイドル"上がりの彼女、もちろんポテンシャルは十分。パワフルな歌唱を随所で見せつける仕上がり。顔は怖いと思うのこの人は。

その若さで力任せに張り上げまくる声は、正直なところおっさんにはいささかつらいと感じる部分があり、平たく言えば、うっさい。時折な。
なので、しっとりとしたこの曲をチョイス。張り上げない声も魅力的だよ。そうおっさんは、彼女に教えてあげたい。
共演のEd Sheeranもいい仕事をしています。単に彼をアイドルだと思っていたんですけど、大変失礼しました。



おんなのこ、というところで。これも昨年のレコードなんですが。
さて、すっかりほのぼのしたところで。貴様たち、メタルの時間だ。

Rolling StoneをみてもLoudwireをみても今年の1位はMarilyn Mansonになってますね。ほう、と思ってyoutubeで確認すると、マリマンが若かりし頃の鳥肌実に見えました。
マリマンは息の長い活躍を見せていますが、音楽的には必ずしも前衛的ではなくて、むしろ先人の枕歌をかなり忠実に引く人だと思うんです。ボウイとかね。僕が嫌いな時代のボウイだ。出で立ちは前衛的だけど。
だから今のマリマンが評価されるっていうのは、尖っているからじゃなくて、懐古趣味的な意味合いかもしれないよ。
懐古趣味といえば古豪、Iron Maidenの評価が高いようですね。さすがです。

個人的にはStone Sourがありちぇんの"We Die Young"のカバーをしてぐっときてたり、Fear Factory の"Genexus"は快作だなぁと思ったり。
Enter Shikariってレコード全部が面白いわけじゃないんだけど、時折僕の中にインストールされている中二病精神をわしづかみにしやがります。まったく無茶しやがって。

 
いいかげん、あらふぉーなので、どうなのかと思うんですが、仕方がありません。不思議な負け犬高揚感。もうね、"Juggernuts"を聴いた時からずっとそうなんですから。

瞬間風速的な輝きか。ヴォーカルのノド的にも。そんな風に思っていたのだけれど、無事4枚目のレコードを聴くことが出来て、素直に嬉しい。


そして、おじさんはね、メタル業界でDjent(ジェント)なんてジャンルができてたなんて、ちっとも知らなかった。Wikiさんによると、8弦ギターとポリリズムやシンコペーションらしい。はてさて。いやー。時代は変わるもんだ。
 
かこいいじゃないか。
Peripheryは今年知ったんだけど、けっこう愕然としました。リズムが複雑過ぎてさっぱりわからない。あんなにハイハットを細かく刻むべきリズムが一体どこにあるのか、わからない。わかんねぇなあ、と思って聴く。でも分からない。また聴く。という繰り返し。
で、好きになっちゃいました(てへ)。

上の動画、時折ディレイがかかるんですね。面白い見せ方だな、みてたんだけれど、これってもしかしてシンコペーションを意識しているのかしら。
ディレイが解除されると、追いつくために早送りになる。タメたり抜いたりした、次の拍の加速感みたい。考えすぎかしら。


7弦8弦の採用とか、ドロップ・チューニングによるヘヴィネスやリズムの強調であれば、同じく今年レコードを出したFearFactoryさんたちがいるわけですし、目新しくはない。ヴォーカルはグロウル/エモなスタイルで、それこそ昨今のアメリカには掃いて捨てるほどいる。特筆すべきなのはやっぱり、複雑怪奇なリズムワークなのだと思う。

いちいちリズムの解析までしないけれど、ドロップ・チューニングのベースとギターのストロークとドラムが、がつっと噛みあうタイミングがある。それはまるで、打ち寄せ続ける波が、なにかの拍子で突然大きなものになるよう。すごく効果的で、ヘヴィだ。
彼らの昔のレコードを聴くと、テクニカルだけれど、もう少しスピーディーだし、メロディも明確で聴きやすい。個人的にはFACTを思い出した。ただ、聴き応えでは今年リリースされた2枚のレコードのほうが、面白いね。

今作には10分を超える長尺の曲もあるし、もはやプログレの亜種でしょ、と思ってしまう。たとえば、Dream Theaterなんかの横にいても違和感がないだろう。ほら、ギターの皆さんの楽器のポジションも高めじゃないですか。ジョン・ペトルーシみたいに。

よくわかってないけれど、今後に期待してます。今年一番の衝撃。



疲れてきたところで。今年日本でも少し紹介されてたこいつを。
 
その歌声は、まずもってオオカミさんたちの琴線に触れたようですが、人間にも心地よく響きます。わおーん。
Shawn Jamesさん。詳細は不明。ロック〜カントリーのシンガーのようです。けっこうガナリ声も迫力があってかっこいいんですが、こうして普通に歌われる声も気持ちがいいです。なんというか、スムーズで温かい。人の心に、すっと入っていく声。
"American Hearts"はA. A. Bondyの2008年のカバー。"俺たちはオオカミに取り上げられ、野生に生き、からみつく風に吠える"という歌い出し。そりゃ、オオカミと歌いたいでしょう。わかるぜ。
でも内容的にはプロテスト・ソングなんですね。
母は泣き、父は寝ずにいる 子どもたちが心配で
もし神さまが戦争を起こしたのなら そいつは神さまなんかじゃない
主は、子どもたちを死なせたりしないから
2008年。イラク戦争終結が近い、当時のアメリカの世相を克明に切り取った曲、なのか。当方、アメリカン・ハートを携えていないブディストですが、ぐっときました。
コーラスではこんな風に歌われるのです。
俺を踏みつけるなよ、兄弟 俺もお前と同じようにアメリカン・ハートを持って生まれてきたんだ
まさにUSA!な展開です。
そんな「アメリカン・ハート」はきっと、彼の地に存するウィルダネスと結びついているだろう。それをフロンティア精神といってもいいし、地霊と呼んだって差し支え無いだろう。
そしてそれは不安を押し殺しても、その旗の下に集うに足る理由であること。それが彼らの誇りであると同時に、終わることのない悲しみにも結びつく。
結局「アメリカン・ハート」は、子どもたちを死地へ送り続けるのだ。

矛盾している。ここから眺めると、そう考えてしまう。
でもさ。そう言い放つ、僕らの掲げた旗は、どれだけ確固としたものなのだろう?

カントリーって、ずっと変わらないジャンルだと思うんです。Djentとか、ない。言ってしまえば、陳腐で、退屈です。けれども、そもそも僕らのあり方や、僕らが守ろうとするものって、そう時代で変わるものじゃないじゃないですか。
変わらないものを見つめ、歌う。だから変わらない。人が入れ替わるだけ。
歌枕を引き続けることにだって、大事な意味があると思うんです。

僕はね、いろいろ考えさせられるところがありましたよ。

このカバー集は2014年の作。Itunesで買うと1,500円だけど、サイトから買うと8ドルだぜ。
さらに"Deliverance"という同年のソロ作は"It's up to you"ルール。ただで落とせるよ。アコースティカルで、温かみのある彼の声が堪能できます。
まずこれを聴いてみて、気に入ったらカバー買ってみればいいんじゃないかな。8ドルで。Itunesで1,500円も払って買わぬように。



うーん。そんなところかな。
来年も素敵な音楽にたくさん出会えるといいな。