2012年12月23日日曜日

2012年はこんなの聴いてたよ

今年もそんな時期になってしもうた。暇な時間が多かったのでたくさん音楽は聴けたんじゃないかと思う。いつもどおり順不同。だいたいは今年のレコード。なはず。



まずは知ってる人。
・Ginger Wildheart "100%"
ジンジャー・ワイルドハートことジンジャーさんのレコード。これはソロなのかThe Wildheartsのレコードなのか。ジンジャーすなわちワイルドハーツなので特に気にする必要もない。
HPを読む限りレコード三枚分のレコーディングをして投票で選んだそう。相変わらず多作なジンジャーさん。ワイルドハーツよりもソフト。
好きなだけキーボード入れて、クワイア入れて、女性コーラス入れてることのはソロならでは。おもちゃ箱をひっくり返したおっさん。凡百のガールズポップなんぞよりもずっとかわいーことをしていると思う。

と、同時にうるさいギター二本とベースドラム、そしてむさい男の三声ハーモニーという、ある種限定された状況における無理やりなキャッチーさこそが、Wildheartsの魅力だったのだな、と思った。POP職人としてはステイタス・クオーみたいなブギーバンドになるといいんだと思います。


・Jack White "Blunderbuss"
男前の初のソロ作はド・ブルース。The White  Stripesとかラカンターズよりも渋めの印象。なんだかThe Black Crowsを強く想起しました。リッチとクリスの役を一人でやってると思えば、こんなに説得力のあることはない。
ゴスペルっぽかったりと黒っぽく、シブいけどゴージャスな音作り。サザン・ロックに近づいているみたいだ。"By your side"以降のクロウズっぽいと思うのはそんなところにも。

ジャックの歌い方はますますロバート・プラント的。奇しくもクロウズのリッチはジミーペイジとLed Zeppelinをカバーしていたけれど、次の再結成はジャックを入れればいい。ロバートがやりたがらないなら、ね。
変に加工せず普通に鳴らしてみました、というシンプルさがなんか中毒的な感じで何度も聞いてしまった。それがエキサイトメントかどうかはまた別なんだけど。ライブはきっと楽しいだろう。
ジンジャーもStone Sourもそうだけどソロで自由にやっている風景を今年はよく目にしたように思います。


・Tori Kelly "PYT"

シンプルに鳴らしてみました、で、この人。マイケルのカバー。よく存じあげない。youtubeで発見。バイオを読むと若干20歳。「アメリカン・アイドル」に出てたというからには芸歴は長い人なのかもしれません。
イメージとしてはデヴュー時のナタリー・インブルーリアあたりを想起した。いやいや。一人芸でこれはちょっと凄いんじゃないか。顔は少し怖い、かな。僕としては。僕としては、だ。

EPが一枚出ていて、シンプルで、こちらもいい仕上がり。昨今のレコードはPCでいじりこむので「単に鳴らしている」感じは新鮮。力量がないとシンプルになんて鳴らせない。アコースティックのライブがyoutubeにいっぱい落ちている。レコードを出した時どうなるのかというところが楽しみ。Bon Lverのように作りこんで台無しにならないといいな。


・Hobson's choice "Of the wave"
これも知らなかった人。オリジナル音源はyoutubeに落ちてないみたいだ。残念。
これはジャズなのか、ポップなのか。なにしろたまたま見つけたので。カナダのバンドみたい。ウエブサイトから4曲入りの無料EPがダウンロードできる。
すごく澄んだ、高い声を持つ女の子。トランペットとユニゾンで歌う。僕は金管楽器の音が嫌いです。あんまり高いヴォーカルって得意じゃない気がするんです。倍音のせいだろうか、頭がくらくらする感じがして。気持ちがいいような悪酔いしてるような。いや、嫌いってわけじゃないんだけど。頭がわんわんする感じで。

でもこれはなんだか不思議と耳を惹いた。小鳥同士が会話をしているみたい。と、いうことは僕は歌として聴いているのではなくて、楽器のひとつとして彼女の声を聴いてるのかも。
水彩画のようなサウンドスケープも印象的。刷毛で少しずつ色を積み重ねていくよう。
親密な感じとともに、ジャズっぽくどっかでクールで引いたような感じも。キャッチーじゃないときのジョニ・ミッチェルみたいな雰囲気もかっこいい。
まずは無料EPをチェックだ。


・Bon Lver "Woods" from "Blood bank"EP
で、件のBonさん。Sigur Rossもとってもいいレコードだったけど前に書いたのでこっち。09年だったけど今年聴いた。どうも僕はまだダブ・ステップっていうものの実像をうまくつかんでいない。そもそもBon lverはダブ・ステップだとも思わなかったし。
去年のレコードは印象には残っていない。"Perth"はかわいらしくて好きだけど。ゴテゴテした音の向こう側は、こういうことを考えてする人が静かに鎮座ましましていた、とこれを聴いて知った。

もしも機械が「もののあわれ」を感じる日を想像してみる。機械が人間に線香を上げる日がくるとしたら。こんな風にぼやぼやと「歌う」日が来るとしたら。人間は浮かばれるかもしれない。そんな風に思いました。そのときに人間がいるのかは知らん。機械が機械ではなくなる日には。なんだこの感想は。
あのですね、鳥肌が立ちました。祈りです。
今年のベスト・チューン。2009年だけど。いや、素晴らしかった。


寒々しくなってきたところで
Paradise Lost "Tragic Idol"
ニック・ホルムズはその昔、悩み多き白皙の美青年といった風貌だったが。中年期の悩みがそうさせるのか、再びディストーションボイスで歌うようになった。
”Host”以降の何作かはソフトに歌っているのとエレクトロサウンドのせいで、「シーンに日和ったオリジネイター」という批判も。それは一方で、コンテンポラリーな世界に足を踏み入れたとも言えると思うのね。もう孤高かつ極北、という存在ではないけれど、幅を広げたここ数年だったのでは。
ゴシック・レコードとして、というよりメタル・レコードとしても普遍的な魅力がある。メロディはアレですけどかっちりしてるし。前作よりもテンポが落ちた分、聞き手を選ぶ感じはするね。
自動的に寒々しい気分になれるので冬の雪道とかでこれ聴きながらスキー場行きたい。もちろんナイターで。あーほんといきたい。
にしてもいいドラマーだな。と思ったらAt the gates〜Cradle of filthの人かよおい。


すっかり冷えきったところで、最後に温かい一枚。
・高木正勝「おおかみこどもの雨と雪サウンドトラック」
本編は見てません。見れません。見たいぜ。
本作でも高木印の、迸るというか、暴走するようなフレージングが随所で聴けるが、感じとしては昨年の"Niyodo"に続くような静かな、童謡的作風かな。
なんだか久石譲化が進行しているようで若干心配になるが、まあこれはサントラということで。ちょっと大仰で、押し付けがましいような感じもある。
このひとの作る音像のイメージはいつも初夏なんです。"girls"のイメージ。ここ数作でのエレクトロニカからの離脱は、洋風の家から日本家屋に移ったような感じかな。縁側で昼寝したいところです。今だってこれ聴きながら爆睡してますけども。

来年2月6日に新しいレコードがでるとの報。次は2枚組42曲で絵本つき!なんだそれ。itunesで買うと絵本が読めないじゃないか!楽しみです。



その他、
Sigur Ross"Valtari"、 Water water camel"おんなのこがわらう時"、VAN HALEN"A different kind of truth"、Zazen Boys"すとーりーず"、Stones sour"House of gold & bones pt.1"、Soundgerden" King animal"、"Passion pit"Grossamer"、Enter shikari "A flash flood color"等。
ベスト・オブがっかりさんはMars Voltaさん。

ちなみに再生回数はダントツでSoundgardenやぞ、おまえ、とLast.fmさんは教えてくれました。これはもう、懐かしさ込みですね。


と、こんな感じでした。来年も素敵な音楽に出会えますように。
それではみなさま良いお年を。