2012年6月9日土曜日

海へ行く





先日ふった土砂降りの雨で、ウミンの街にある運河の水かさが一気に増した。
溢れるのではないか、と不安になるほどの雨が止んで、青空が戻ってきた。

錆色をしたこの辺りの水は、雨のない乾季には。文字通り煮詰めたようにして、その色を増していた。この辺りは上下水道はない。「母なる運河」はゴミ捨場でもある。だから、水が少なくなると、ゴミが目立ち、悪臭を放ち始める。

独特の茶色い水が、少しだけきれいになった。
たくさんの雨が、薄めたり、押し流したりして、ちゃらにした。たぶん。



なんだかよくないような気もする。
環境に配慮するというのはどういうことなのかを考える。生ゴミといっしょにプラスチックも捨ててしまうこと。これはまずい。
ただ、配慮するだけの基盤がない場所でその指摘は有効なのか、僕は考えあぐねる。基盤とはインフラ、あるいは配慮する考え方だ。問題は系統だったゴミの回収システムがない場所でプラスチックゴミはどう扱われるべきなのか、ということに留まらない。

それを欠いた状態で、何かを打ち立てることができるだろうか。ここにいる人たちはそこから何を得るだろうか。何を学ぶだろうか。僕はまったく考えあぐねる。



閑話休題。



ちょうどスピードボートに乗る機会があり、海に行こう、ということになった。
この街にはスピードボートはない。あるのは普通のポンポン船だ。スピードボートはカマウ市にある。

普段生活している分には海が近くにあることなんて考えない。雷魚のような川魚も多いが、海魚も会社のひるごはんで出てくる。実は海は近くにある。
地図を見るとウミン地区から海までわずか10キロ。



しばらく木々の間を抜けていく。
スピードボートはまったく早くて、通り過ぎるとまるで暴走族でも見るような目でみられてしまう。
今ではウミンでもほとんどの船に原動機がついている。手漕ぎのボートを使っているのは渡し船くらいだ。ところが原動機ボートは、わずか10年前にはほとんどなかった、と聞く。つまり手漕ぎのボートしかなかったという。その時代のウミンは、ちょっと想像がつかない。

10年前には原動機つきの乗り物が殆ど無かった時代があって、今では船もバイクもある。カマウ市に行く道は現在拡幅が進んでいて、遠からず車だって平気でウミンまで来るようになるだろう。僕が体感したことのないスピードで、この場所の様子は変わりつつある。



運河は舟の往来が多いので看板がある。転回禁止、駐「舟」禁止はわかる。
右の標識はなんだろう。